寄生虫の虫卵ずかん(犬・猫編)─ 顕微鏡写真をまとめて見比べよう
にゃるき
今日はいつもと趣向を変えて
「ずかん回」にゃ。虫卵は1個ずつ覚えるより、
並べて見比べるのがいちばん速い。違いは「比べたとき」に初めて見えてくるからにゃ。
わん助
正直に言うと…顕微鏡の写真って、どれも茶色くて丸くて、ぜんぶ同じに見えるんだよね…。
にゃるき
最初はみんなそうにゃ。でも見るところは
4つだけ:
①大きさ ②形 ③殻の厚さ ④中身。この順にチェックすれば、下のずかんの9種はちゃんと見分けられるようになるにゃ。
ずかんの見方 ─ チェックは4つ
| ① 大きさ | まずµm(マイクロメートル)のケタ感。ジアルジア(約10µm)とミクロフィラリア(約300µm)では30倍違う |
| ② 形 | 球形?楕円?レモン形?「袋」に入っている? |
| ③ 殻 | 厚くてデコボコ(回虫)か、薄くてツルッ(鉤虫)か |
| ④ 中身 | つぶつぶの細胞のかたまりか、幼虫・六鉤幼虫(ろっこうようちゅう=6本のカギをもつ条虫の子)が入っているか |
犬・猫の寄生虫ずかん(9種)
※ 写真の倍率はカードごとに違うので、写真同士で大きさ比べはできません。大きさは数値(µm)で覚えましょう。
写真と解説を見ながら特徴をつかもう。
線虫
犬回虫の卵
Toxocara canis
約75〜90µm
ほぼ球形で殻が厚く、表面にゴルフボールのような細かいデコボコ。中身は暗い1つのかたまり。
国試メモ:人獣共通(トキソカラ症=幼虫移行症)。子犬は胎盤感染もする。
写真: Joel Mills / CC BY-SA 3.0
線虫
猫回虫の卵
Toxocara cati
約65〜75µm
見た目は犬回虫そっくりで、ひと回り小さい。写真だけでの区別はプロでも慎重になるレベル。
国試メモ:子猫への感染は乳汁感染が主体(犬回虫と違い胎盤感染はしない)。
写真: Joel Mills / CC BY-SA 3.0
線虫
犬鉤虫の卵
Ancylostoma caninum
約60×40µm
楕円形で殻がうすくツルッとしている。中に分裂した細胞のつぶつぶ(桑実胚)が見えるのが決め手。
国試メモ:経口・経皮・乳汁と感染経路が多彩。小腸で吸血するので子犬の貧血の原因に。
写真: Joel Mills / CC BY-SA 3.0
線虫
犬鞭虫の卵
Trichuris vulpis
約80×40µm
レモン形(樽形)で、両端に無色の栓。この栓が見えたら鞭虫で決まり。いちばん見分けやすい卵。
国試メモ:寄生部位は大腸(盲腸)。写真の下の大きい方が犬鞭虫、上はヒトの鞭虫。
写真: CDC / パブリックドメイン
条虫
瓜実条虫の卵嚢(らんのう)
Dipylidium caninum
卵嚢 約100〜200µm
卵が1個ずつではなく「袋」にまとめて入っているのが最大の特徴。袋の中に卵が数個〜30個ほど。
国試メモ:中間宿主はノミ。肛門周囲を動くゴマ粒状の片節も診断の手がかり。人(特に小児)にも感染する。
写真: Joel Mills / CC BY-SA 3.0
条虫
テニア属(条虫)の卵
Taenia spp.
約30〜40µm
回虫よりずっと小さい球形。厚い殻(強拡大では放射状のスジが見える)の中に六鉤幼虫が入っている。
国試メモ:エキノコッカス(多包条虫)の卵と形では区別できない——これが頻出ポイント。猫条虫の中間宿主はネズミ。
写真: Joel Mills / CC BY-SA 3.0
原虫
シストイソスポラ(コクシジウム)のオーシスト
Cystoisospora felis
約40×30µm
きれいな楕円形のカプセル。写真は胞子形成が進み、中に丸い袋(スポロシスト)が2個見える状態。
国試メモ:子犬・子猫の下痢の原因。犬と猫で寄生する種が違う(相互にはうつらない)。
写真: Ximo Castellà / CC BY-SA 4.0
原虫
ジアルジアのシスト
Giardia intestinalis
約10×8µm
このずかんで最小クラス。小さな楕円で、倍率を上げないと見落とす。写真はヨード染色で色がついた状態。
国試メモ:栄養体は洋ナシ形で下痢便に出る。人獣共通感染症として扱われる。検出には硫酸亜鉛遠心浮遊法が有効。
写真: Joel Mills / CC BY-SA 3.0
血液
【番外】犬糸状虫のミクロフィラリア
Dirofilaria immitis
体長 約300µm
これだけ糞便(うんち)ではなく血液から見つかる。血液塗抹で赤血球の間をぬう細長いヘビ状の虫体。
国試メモ:中間宿主は蚊。予防薬投与前の検査が大事(ミクロフィラリア陽性犬への急な駆虫はショックの危険)。
写真: Alan R Walker / CC BY-SA 3.0
まとめ比較表
| 寄生虫 |
大きさの目安 |
ここで見分ける |
| 犬回虫 |
約75〜90µm |
球形・厚い殻・表面デコボコ(ゴルフボール) |
| 猫回虫 |
約65〜75µm |
犬回虫そっくりでひと回り小さい |
| 犬鉤虫 |
約60×40µm |
薄い殻・中に分裂した細胞のつぶつぶ |
| 犬鞭虫 |
約80×40µm |
レモン形・両端に栓 |
| 瓜実条虫 |
卵嚢 約100〜200µm |
卵が「袋」入り(卵嚢) |
| テニア属(条虫) |
約30〜40µm |
小さい球形・中に六鉤幼虫。エキノコッカス(多包条虫)卵と区別不能 |
| シストイソスポラ |
約40×30µm |
楕円のカプセル(オーシスト) |
| ジアルジア |
シスト 約10×8µm |
最小クラス。栄養体は洋ナシ形 |
| 犬糸状虫 |
ミクロフィラリア 約300µm |
血液中の細長い虫体(糞便ではない) |
※ 大きさ・見え方は検体の状態や検査法で変わります。数値は代表的な目安です。回虫では、殻の表面がなめらかな近縁種(犬小回虫 Toxascaris leonina)もいます。
検査法もセットで覚える
- 浮遊法(ふゆうほう):比重の重い液に便を混ぜ、浮いてきた虫卵を集める基本の方法。線虫の卵やオーシストは浮きやすい。
- 条虫の卵・卵嚢は浮きにくいことがある:瓜実条虫は便表面の片節(ゴマ粒状)を見つけるのも大事な手がかり。
- ジアルジアは特別あつかい:小さくて壊れやすいので、直接法(新鮮便)や硫酸亜鉛遠心浮遊法、抗原検査キットを使う。
- 犬糸状虫は血液検査:糞便検査では見つからない。ミクロフィラリア検査と抗原検査を組み合わせる。
1問チャレンジ
瓜実条虫の中間宿主はどれか。
- 1. カ
- 2. ノミ
- 3. マダニ
- 4. ケンミジンコ
- 5. ネズミ
1カ:犬糸状虫を運ぶ中間宿主。ずかん番外編とセットで覚える。
2ノミ:これが正解。ノミの幼虫が卵嚢を食べ、ノミの体内で感染できる形に育つ。犬猫が毛づくろいでノミを飲み込むと感染する。だから瓜実条虫の対策はノミの対策とセット。
3マダニ:瓜実条虫の中間宿主ではなく、バベシアなどを運ぶ吸血の運び屋。
4ケンミジンコ:マンソン裂頭条虫の第一中間宿主(第二中間宿主はカエル・ヘビ)。
5ネズミ:猫条虫(テニア属)の中間宿主。ネズミを捕る猫で感染がみられる。
わん助
見比べたら、ほんとに違って見えてきた!「両端に栓ならレモンの鞭虫」「袋入りなら瓜実」…あれ、ぼく意外といけるかも!テストモードでもう1周してくる!
にゃるき
その調子にゃ!実習や現場で顕微鏡をのぞく前に、このページで
目を慣らしておくと本物にも強くなるにゃ。
覚え方のコツ
- サイズの階段で丸暗記:ジアルジア10 → テニア35 → イソスポラ40 → 鉤虫60 → 回虫80(µm)。「ジ・テ・イ・コ・カイ」と小さい順に。
- 一発で決まる特徴から探す:両端の栓=鞭虫/卵の袋=瓜実/デコボコ球=回虫/血液にいる=ミクロフィラリア。
- 「そっくりさん」はセットで注意:犬回虫と猫回虫(大きさ)、テニアとエキノコッカス(形では区別不能)。
- 虫卵の写真問題は消去法が強い:4つのチェック(大きさ→形→殻→中身)で選択肢を削る。
※ ここに参考書のリンク枠を挿入予定
関連ページ
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