抗菌薬の副作用① ── 細菌にだけ効くはずなのに、なぜ動物にも出る?
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深掘り回 第7弾:抗菌薬のはなしの完結編・前後編の
前編です。
系統→
使い方ときて、いよいよ副作用。これまで繰り返してきた「副作用も系統ごとにセット」の中身を回収します(後編は
関節・歯・血液に出るのはなぜ?)。前回予告した血球ずかんは、いま顕微鏡写真を準備中です。
わん助
実はぼく、ずーっと引っかかってることがあるんだ。抗菌薬って
細菌だけを攻める薬なんでしょ? 動物の細胞に細胞壁はないから当たらないって習ったよ。なのにどうして「腎臓に注意」とか、
動物のほうに副作用が出るのさ。矛盾してない?
にゃるき
それは今日いちばんいい質問にゃ。その理屈は
原則としては正しい。でも、この安全のしくみには
抜け道が3つあるんだにゃ。今日は原則と1つめの抜け道、残り2つは後編でやるにゃ。まずは問題から。
まずは問題
アミノグリコシド系抗菌薬に関する記述として、適切でないものはどれか。
- 1. 腎毒性がもっとも強いのはネオマイシンである。
- 2. 聴覚や平衡感覚の障害が報告されている。
- 3. ストレプトマイシンは体内に蓄積しにくく、腎毒性が起こりにくい。
- 4. 経口投与では消化管からほとんど吸収されない。
- 5. 大きな創傷や熱傷にくり返し外用しても、皮膚から吸収されることはない。
わん助
ぼく3番! だって「
副作用も系統ごとにセット」って習ったもん。同じアミノグリコシドの仲間なのに、ストレプトマイシンだけ腎毒性が起こりにくいなんて、そんな
例外はずるいでしょ。
にゃるき
惜しいにゃ。「系統でセット」は覚え方の入り口として大正解。でもセットの中にも、
薬ごとの顔つきのちがいまではあるんだにゃ。
正解は5番です。アミノグリコシド系は経口投与では消化管からほとんど吸収されず(吸収されるのは投与量の1%未満)、この点では安全側の薬です。ところが大きな創傷や熱傷、皮膚潰瘍にくり返し使うと、皮膚から吸収されることがあります。「ぬり薬なら体に入らないから安心」は通用しません。
そして3番は本当のことです。同じ系統の中でも腎毒性がもっとも強いのはネオマイシン、逆にストレプトマイシンは体内に蓄積されないため腎毒性が起こりにくい。系統でセットの副作用を覚えたうえで、こうした薬ごとの顔つきが試験では問われます。
原則 ── 「細菌にだけ効く」は本当
まず、わん助の理屈を確かめておきます。細菌の体は細胞壁というじょうぶな壁に囲まれていますが、動物の細胞に細胞壁はありません。だから細胞壁を攻めるβラクタム系は、動物の体の中でも細菌だけをねらい撃ちできます。動物にはない部品をねらう ── これが抗菌薬を安心して使える理由の土台です。
ただし、細胞壁のように「細菌にしかない部品」ばかりを攻めているわけではありません。それでも、たとえばキノロン系は副作用の発生はわずかとされているように、多くの薬はふだん安全に使えています。では、実際に注意すべき副作用はどこからやってくるのでしょうか。
抜け道① 薬は「出口」に濃く集まる
薬はいつまでも体に残るわけではなく、役目を終えると体の外へ出ていきます。アミノグリコシド系は水に溶けやすく、腎臓の糸球体でろ過されて、そのほとんどが24時間以内に尿へ排泄されます。体じゅうに散らばった薬が、最後は出口の腎臓に集まってくる ── 腎障害という副作用は、この通り道の話なのです。あわせて聴覚や平衡感覚の障害も報告されており、アミノグリコシド系は「腎臓と耳」でセットと覚えます(腎臓がどうやって尿をつくるかは腎臓の深掘りで)。
ここから大事な応用がひとつ。腎臓病をもつ動物や腎血流が減った動物では、薬がうまく出ていかず血中濃度が上がるため、投薬量を減らすなどの対応が必要になります。副作用の知識は「こわい話」ではなく、量を調節する根拠として使うものです。
わん助
そっか、薬にも
通り道と出口があるんだ! 細菌をえらんで攻めるのは本当でも、旅の終点の腎臓には
薬そのものが濃く集まっちゃう。だから「腎臓に注意」なんだね。矛盾じゃなかった!
にゃるき
その調子にゃ。ただ、抜け道はあと2つある。後編では副作用が
関節や歯や血液という意外な場所に出る話をするにゃ。「内臓に出るんでしょ」と思ったまま行くと、ちゃんと引っかかるにゃよ。
覚え方のコツ
- 原則はわん助の理屈で正しい:動物にはない部品(細胞壁)をねらうから、動物には当たらない。
- 抜け道①は薬の出口:アミノグリコシド系は腎臓でろ過されて尿へ=腎障害。耳(聴覚・平衡感覚)とセットで。
- 同じ系統でも顔つきがある:腎毒性の最強はネオマイシン、ストレプトマイシンは蓄積しにくい。
- 「ぬり薬なら安心」は通用しない:大きな創傷・熱傷・皮膚潰瘍からは吸収されうる。
看護でどう活きるか
| 外用薬の説明 |
「塗り薬だから心配ないですよね」と飼い主さんに聞かれたら ──「大きな傷ややけどに塗るお薬は、体に入ることがあるんです。決められた量と回数で使ってくださいね」。今日の正解5がそのまま説明のことばになる |
| 腎臓の既往 |
問診で腎臓病の既往を拾っておく。「腎臓の数値は最近測っていますか」── 腎臓から出ていく薬は、量を減らす対応の根拠になる。高齢の子ほどこの一言が効く |
にゃるき
今日のわん助の「例外はずるい」は、じつはいい間違え方にゃ。
セットで覚えた全体像があるから、例外に気づける。丸暗記が地図に変わりはじめた証拠にゃ。後編でその地図を完成させるにゃ!
わん助
うん! アミノグリコシドは
腎臓と耳、ぬり薬でも体に入ることがある! 後編の前に、アプリでアミノグリコシドの問題を解いておくね〜!
※ ここに参考書のリンク枠を挿入予定
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