にゃるき
にゃるき先生の解説コーナー
愛玩動物看護師国家試験合格に向けて一緒に頑張るにゃー!!

小さくなる変化 ── 萎縮は、戻ることがある

⏱ 約10分🔬 病理のきほん2026-09-12 公開
🔎 病理のきほん 全8回の第3回:第1回・第2回は死ぬ変化でした。今回は死なずに小さくなる変化 ── 前の2回にはなかった性質が出てきます。
わん助
萎縮でしょ、知ってる! 使わないと小さくなるやつだよね。ギプスしてた脚が細くなってたの、見たことあるもん。……でも一回小さくなったらもう戻らないんでしょ。かわいそうだなあ。
にゃるき
半分あたりで、半分はずれにゃ。「使わないから」は7つあるうちの1つにゃ。そしてもっと大事なのは後半にゃ ── 「もう戻らない」は、はっきり否定されているにゃ。今日はそこをひっくり返すにゃ。

萎縮は「原因」で7つに分ける

萎縮とは、正常に発生した器官や組織において、細胞数や細胞容量が減少することにより起こる変化をいいます。頭の「正常に発生した」が大事で、いちど正常な大きさにできあがった臓器があとから小さくなるのが萎縮です。

萎縮は原因により7つに分類されると決まっています(生理的・栄養障害性・神経性・貧血性・内分泌性・不使用性・圧迫性)。ただし試験は、名前ではなく原因の言葉で出します。実際の出題は「萎縮の原因でないのはどれか」、選択肢に並んだのは加齢・栄養障害・圧迫・不使用でした。7つを丸暗記するより、この原因なら萎縮が起きるかを判断できる形で持つほうが点になります。

萎縮 = いちど正常にできた臓器が、あとから小さくなる 病気ではない 生理的萎縮 例)若い動物の大きな胸腺が 年齢とともに小さくなる これは異常ではない 病的な因子による 残り 6つ ・栄養障害性 ・神経性 ・貧血性   ・内分泌性 ・不使用性  ・圧迫性 原因が取りのぞかれると 正常な大きさに戻ることがある 試験は名前ではなく「この原因なら萎縮か」を問う 出題例)萎縮の原因でないのはどれか 選択肢に並んだのは 加齢・栄養障害・圧迫・不使用

1つだけ、病気ではない萎縮がある

7つのうち、生理的萎縮だけが病気ではありません。挙げられる例は胸腺で、若い動物では大きな胸腺が年齢とともに小さくなる ── これは異常ではなく、そういうものです。そして「そのほかの萎縮はいずれも病的因子によるもの」と続きます。つまり7つは横一列ではなく「1+6」に割れる。ここを押さえておくと、選択肢に「加齢」が出たときに迷いません。

だから、戻ることがある

わん助
えっ、戻るの? 小さくなっちゃったのに?

定義をそのまま引きます。病的因子によるもので、原因が取りのぞかれると、萎縮した組織や臓器が正常な大きさに戻ることがあります。

なぜ戻れるのか。萎縮は細胞が死んでなくなったわけではないからです。第1回・第2回で見た変化は細胞そのものが失われますが、萎縮では細胞は生きたまま数や大きさを減らしている。減っただけなので戻り道がある ── ここが萎縮のいちばん大事な性質で、看護がいちばん関われるところです。

生理的加齢で胸腺が小さくなる(唯一、出典のある例)。病気ではない
栄養障害性病気でごはんを食べられず痩せ、筋肉が落ちていく
神経性神経の支配が断たれて縮む。三叉神経の障害による側頭筋・咬筋の萎縮など
貧血性血のめぐりが乏しくなって縮む
内分泌性ホルモンの刺激が来なくなって縮む。副腎皮質ホルモン剤を大量に長期間使うと副腎が機能性萎縮を起こす(→第8号)
不使用性ギプス固定・ケージレスト・寝たきりで使わず縮む
圧迫性押されて縮む。尿管結石で尿管が閉塞すると尿管や腎盂が拡張し、最終的に腎臓は機能を止めて萎縮する

※ 太字は出典のある例。それ以外は分類名が指す原因を臨床の場面に置きかえたものです。問われるのは原因と分類の対応なので、例は記憶の手がかりに。

神経性と不使用性は、重なることがある

わん助
ねえ、椎間板ヘルニアで後ろ足が麻痺した子の脚が細くなるのは、神経性? 不使用性? どっちも当てはまりそうなんだけど……
にゃるき
いいところに気づいたにゃ。答えは「両方が重なっている」にゃ。この2つは実際の患者さんではきれいに分かれないことがあるにゃ。

麻痺している後肢では、神経の支配が落ちている(神経性)のと、その脚を使えない(不使用性)が同時に起きています。どちらか一方に決める問題ではありません。混ざらない純粋な神経性の例は、三叉神経の障害による側頭筋・咬筋の萎縮 ── 噛むのをやめたからではなく神経が届かなくなったから小さくなります。神経性のイメージはこちらで持つとぶれません。

そして、重なっているからこそ看護の出番があります。ケージレストや寝たきり、ギプス固定などの不活動状態が続くと、筋萎縮・骨萎縮・関節拘縮・褥瘡形成といった「廃用症候群」が生じるとされています。神経のぶんはすぐ戻せなくても、使わないぶんは減らせる。前十字靭帯断裂の整復術で手術直後から5週目までの理学療法が必要とされるのは、そのためです。

小さいけれど、萎縮ではないもの

最後に、必ずセットで問われる低形成を。胎子発生の段階で組織や臓器の発達に異常が生じ、ごく小型の組織・臓器しか形成されなかった状態をいい、萎縮とは区別されます。

ここで引っかかる人がいるはずです ──「細胞の数が減るのは低形成では?」。いいえ、数が減ることも萎縮に含まれます。冒頭の定義をもう一度見てください。萎縮は「細胞数や細胞容量が減少する」変化でした。萎縮と低形成を分けるのは、数か大きさかではなく、いつ起きたかです。

違いはいちど正常な大きさになったかどうか。萎縮は「なってから小さくなった」、低形成は「はじめからそのまま」です。ただしある程度の年齢に達してから発見された場合は判別が難しいこともある、と正直に断ってもあります。見た目はどちらも「小さい臓器」だからです。

もうひとつ、対で存在する臓器(腎臓・副腎など)の片側で萎縮や低形成が起こると、反対側が代わりに大きくなります(代償性肥大)。片方が小さいときは反対側も一緒に見るということです。

小さい臓器を見たら、3つを区別する 萎縮 正常にできてから 小さくなった 低形成 はじめから 小さいまま 代償性肥大 片方が小さいと 反対側が大きくなる 萎縮と低形成は、年齢がすすんでから見つかると区別が難しいことがある

1問チャレンジ

萎縮に関する記述として誤っているのはどれか。

1正しい。生理的・栄養障害性・神経性・貧血性・内分泌性・不使用性・圧迫性の7つ。
2正しい。7つのうち生理的萎縮だけが病気ではない。
3これが誤り。原因が取りのぞかれると正常な大きさに戻ることがある。細胞は失われたのではなく減っているため。
4正しい。はじめから小さいのが低形成で、萎縮とは区別される。
5正しい。腎臓・副腎など対の臓器でみられる。

覚え方のコツ

看護でどう活きるか

寝かせきりにしない 不活動が続くと廃用症候群が起こる。これは「起きてしまうもの」ではなく、減らせるもの。指示の範囲でどれだけ動かせるかを担当者どうしで共有しておく
術後の早さ 前十字靭帯断裂の整復術では手術直後から5週目までの理学療法が必要とされている。「落ち着いてから」ではなくすぐ始めることに意味がある
記録の言葉 「左の後肢が右より細くなっています」── 萎縮は左右差で気づけることが多い。周径を測って残せば、減っているのか戻っているのかを次の担当者が比べられる
わん助
ぼく「使わないから小さくなる」で止まってたけど、あと6つあったんだね。しかも戻ることがあるなんて。細くなった脚を見て、かわいそうって思うだけじゃなくなったよ!
にゃるき
次回は、小さくなるのでも大きくなるのでもなく、細胞に物がたまる変化にゃ。名前は「変性」。壊れかけ、という意味ではないにゃよ。
※ ここに参考書のリンク枠を挿入予定
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