定義をそのまま引きます。細胞が傷害される過程において、細胞や組織に異常な物質が出現したり、生理的に存在する物質が大量に蓄積する現象を、病理学的に変性とよびます。
読み直してみてください。「壊れる」とも「死にかけ」とも書いてありません。書いてあるのは出現と蓄積 ── つまり「物がたまる」です。多くの場合は代謝障害が原因で、その結果として細胞や組織の形が変わります。
ちょうど折り返しなので、地図を出しておきます。細胞・組織の機能低下や消失を特徴とする変化は、まとめて退行性変化とよばれます。その中身が4つ ── 変性・萎縮・壊死・アポトーシスです。
お気づきでしょうか。このシリーズがここまで扱ってきたものが、そのまま並んでいます。
変性の名前は、何がたまったかで付きます。脂肪がたまれば脂肪変性、糖がたまれば糖原変性。ですから、名前を先に覚えるよりたまる物のほうを覚えるほうが早い ── そして試験も、そちらを聞いてきます。
| グリコーゲン (糖原) | 糖が元々ある部位に過剰にたまるか、糖がない部位にたまる。糖尿病のときの肝細胞が代表 |
|---|---|
| 脂肪 | 細胞内に中性脂肪が過剰に沈着する。肝臓でみられるものが脂肪肝 |
| アミロイド | 異常な線維性の蛋白が臓器に沈着する。ヨードででんぷんのように紫色になるので類でんぷんともよばれ、コンゴーレッド染色で橙色に染まる |
| カルシウム (石灰) | 局所にたまるもの(異栄養性)と、全身性のもの(転移性)がある。全身性は高カルシウム血症や重度の腎不全による尿毒症に続発する |
| 尿酸 | 組織に尿酸結晶が沈着して重い炎症を起こすのが痛風。鳥類と犬に多い |
実際の出題を見ておきます。第4回(2026)の実地では、この顔ぶれがそのまま選択肢に並びました ── 「肝臓の染色像で赤紫色に染まる物質はどれか」の選択肢がグリコーゲン・脂肪・アミロイド・カルシウム・尿酸(正解はグリコーゲン)、別の1問ではアミロイド変性・グリコーゲン沈着・混濁腫脹が誤答肢に並んでいます。
※ PAS染色という名前は、基礎で習う範囲ではあまり見かけませんが、実地で問われました。グリコーゲンが赤紫色に染まる、という1点だけ覚えておけば足ります。
変性の形態的変化は、最初に2つに分けられます。ひとつは今見た物質の蓄積。もうひとつが、細胞内の水の分布が変わって細胞や細胞小器官が膨らむものです。
こちらは代表を2つだけ。混濁腫脹・顆粒変性は、低酸素や虚血でミトコンドリアが水を含んで膨らむもの。水腫変性・空胞変性は、肝細胞や腎尿細管上皮細胞の小胞体が膨らむものです。たまったのが物ではなく水、というだけで、考え方は同じです。
変性でみられる物質の蓄積に関する記述として、誤っているのはどれか。
| 「変性」と聞いて慌てない | 検査報告書に変性とあっても、それ自体は「死にかけ」の意味ではない。何がたまっているかが本体なので、報告書のその語を読む。言葉だけが飼い主さんに伝わって不安になることがある |
|---|---|
| 脂肪肝という言葉 | 画像や検査で出てくる脂肪肝は、肝細胞に中性脂肪がたまった変性そのもの。「病気の名前」ではなく状態を指す言葉だと分かっていると、説明を聞き違えない |
| カルシウムと腎臓 | 全身にカルシウムが沈着するタイプは、高カルシウム血症や重度の腎不全による尿毒症に続発する。慢性腎臓病の子を看るとき、カルシウムの数字は腎臓の話と地続きだと分かっていると、検査結果の見え方が変わる |