血球ずかん② 赤血球(後編)── 同じ貧血でも、骨髄の返事が違う
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血球ずかん 全5回の第2回:
前編では正常な赤血球と、若い赤血球(多染性赤血球=網赤血球)を見ました。後編はその読み方 ──「
骨髄が反応しているか」と、形が変わってしまった赤血球です。このあとは③好中球、④リンパ球と単球、⑤好酸球と好塩基球と進みます。写真はすべて当サイトで撮影したものです。
わん助
若い赤血球は見分けられるようになったよ。でもさ、
貧血はどれも同じでしょ? 血が足りないんだから
増やせばいいだけじゃん。
にゃるき
同じ「足りない」でも、
骨髄がどう返事をしているかで話がまるで変わるにゃ。塗抹はその返事を読む場所にゃ。まずは1問いくにゃ。
まずは問題
写真の中央にみられる、内部に青い点々をもつ赤血球が血液中に増加しているとき、最も考えられるのはどれか。
- 1. 慢性腎臓病に伴う貧血
- 2. 出血や溶血による再生性貧血
- 3. 骨髄抑制による貧血
- 4. 鉄欠乏による非再生性貧血
- 5. 脱水による血液の濃縮
わん助
ぼく1番!
腎臓の回で「腎臓が悪いと貧血になる」って習ったもん。貧血ときたら
まず腎臓でしょ?
にゃるき
その連想はえらいにゃ。腎臓と貧血はたしかに直結にゃ。でも今回は
写真のほうが答えを持っているにゃよ。この青い点々が何だったか、前編を思い出すにゃ。
正解は2番。青い点々をもつ赤血球は、前編で見た網赤血球です。こわれかけではなく、骨髄から出てきたばかりの新入り。それが増えているのは骨髄が元気に働いているしるしで、出血や溶血で赤血球が失われたときの反応 ── これが再生性貧血です。
逆に1・3・4は骨髄が反応できていない側 ──非再生性貧血で、網赤血球は増えません。
塗抹で「返事」を読む
特別な染色をしなくても、ふだんの塗抹で見当はつきます。骨髄が送り出していれば若い赤血球(多染性赤血球)が増え、大小が混ざる ── 大小不同です。つまり大小不同と多染性がそろえば再生性貧血、どちらも無ければ非再生性貧血。骨髄の返事が正反対なので、その先の検査も見通しも変わります。
核を捨てないまま出てきた赤血球
骨髄が急ぐと、核を捨てる前の赤血球まで出てきます。これが有核赤血球(赤芽球)。見分けはくっきり濃い核があるかどうかです。
ここに落とし穴があります。血球計算機は「核のある細胞=白血球」と数えるため、有核赤血球が多いと白血球の数字が高めに出ます。そこで白血球100個を数えるなかに有核赤血球が5個を超えて混じっていたら(5%超)、白血球数を補正します。
| 補正の式 |
白血球補正値 = 白血球数 × 100 ÷(100 + 有核赤血球%) |
もうひとつ、形そのものが変わる
変化は「若いか、成熟したか」だけではありません。形そのものが変わることもあります。次の写真の矢印を見てください。
問題文は前編と同じで、写真だけが違います。同じ聞かれ方で答えが変わるのがこの3連問の狙いです。
写真は重度貧血を呈する犬の血液塗抹検査である。矢印で指し示す細胞はどれか。
- 1. 有核赤血球
- 2. 標的赤血球
- 3. 分断赤血球
- 4. 網赤血球
- 5. 球状赤血球
わん助
小さくなってる! こわれた残りかけってことでしょ? じゃあ
3番の分断赤血球だ!
にゃるき
「小さい=こわれた」に目がいったのは、よく見ている証拠にゃ。でも
こわれ方にも種類があるにゃ。この子はちぎれたんじゃなくて、
かじられたにゃよ。
正解は5番の球状赤血球。小さく、濃く、中心が抜けていないのが決め手です。免疫が自分の赤血球に目印をつけるとマクロファージが膜の一部をかじり取り、へこみを失って厚い球になります。30〜50%以上で免疫介在性溶血性貧血(IMHA)に特徴的。ほかの溶血性貧血でも少数出ます。
なお、この写真の左下に写る濃い核の細胞が選択肢1の有核赤血球です(矢印は指していません)。
にゃるき
ここで引っかかるのが
猫にゃ。猫はもともと
セントラルペーラーが目立たないから「中心が抜けていない」を手がかりにできないにゃ。前編の犬と猫のちがいが、ここで効いてくるにゃよ。
赤血球ずかん(後編)
再生像
有核赤血球(赤芽球)
決め手:赤血球なのに核がある
核を捨てる前に出てきた赤血球。濃い丸い核が見えます。
国試メモ:5%超で白血球数を補正。貧血がないのに出れば犬では鉛中毒を疑う。
写真:当サイト撮影(犬・矢印は原図)
こわれ方
球状赤血球
決め手:小さくて濃い。中心が白く抜けない
へこみを失い厚い球になった赤血球。セントラルペーラーが消えます。
国試メモ:30〜50%以上でIMHAに特徴的。猫では検出が難しいことがある。
写真:当サイト撮影(犬・矢印は原図)
わん助
貧血はどれも同じじゃなかった!
骨髄が返事をしているかで、まったく別の話になるんだね。しかも塗抹を見れば、その返事が
大きさと色に書いてある!
覚え方のコツ
- 大小不同+多染性=再生性:どちらも無い貧血は非再生性(腎臓・骨髄・鉄欠乏)。
- 核があれば有核赤血球:5%超で白血球数を補正(機械が白血球と数えるため)。
- 小さく濃く真ん丸=球状赤血球:30〜50%以上でIMHAに特徴的。猫では見つけにくいことがある。
看護でどう活きるか
| 貧血の子の説明 |
飼い主さんの「この子、治るんでしょうか」に答える獣医師の説明を支えられます。網赤血球が増えていれば「体はちゃんと新しい血をつくろうとしています」 |
| 数字と目をセットで |
有核赤血球が多い血液は白血球の数字が高めに出ます。「塗抹も見ておきましょうか」の一言が誤った高値の報告を防ぐ |
にゃるき
はじめにわん助は「
増やせばいい」と言ったにゃね。
増やせている体と、増やせない体 ── 同じ貧血でもやることがまるで違う。それを塗抹1枚で見分けたにゃ。次からは白血球にゃよ。
わん助
赤血球だけでこんなに読めるんだ! 次は
好中球だね。その前にアプリで貧血の問題を解いてくる〜!
顕微鏡写真はすべて当サイト撮影(犬の血液塗抹・切り出しと色調補正あり)。矢印の色に意味はありません。
※ ここに参考書のリンク枠を挿入予定
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