にゃるき
にゃるき先生の解説コーナー
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血球ずかん③ 好中球 ── 核の形が、体の急ぎ具合を教えてくれる

⏱ 約11分 ずかん回2026-08-22 公開
🔬 血球ずかん 全5回の第3回①赤血球(前編)②赤血球(後編)では、赤血球の大きさと色から「骨髄の返事」を読みました。今回からは白血球です。このあとは④リンパ球と単球、⑤好酸球と好塩基球と進みます。
わん助
白血球はかんたんだよ。ばい菌をやっつける係でしょ? 数が増えてたら感染症。数さえ見ればいいんだから、形なんてどうでもいいじゃん。
にゃるき
数はたしかに大事にゃ。でも白血球は5種類あって、それぞれ仕事が違うにゃよ。しかも主役の好中球は、核の形が体の急ぎ具合を教えてくれるにゃ。まずは1問いくにゃ。

まずは問題

白血球の構造と機能に関する記述として正しいのはどれか。

わん助
むずかしい……。じゃあ1番! 好中球ってばい菌をやっつける係なんでしょ? 免疫の主役なら、抗体もつくってるんじゃないの?
にゃるき
「ばい菌をやっつける係」まではそのとおりにゃ。そこに目がいったのは筋がいいにゃ。でもこの問題が聞いているのはどの係が、どの仕事を持っているかにゃよ。もう一度、係と仕事の組み合わせを見てみるにゃ。

正解は2番。5つの肢は係と仕事が1か所ずつ入れ替えてあります。中身はこうです。

好中球細菌を貪食する。生まれつき備わった自然免疫の担当で抗体は作らない → 1番が誤り
Bリンパ球刺激を受けて形質細胞に分化し抗体を産生。貪食はしない → 3番が誤り
Tリンパ球B細胞に働きかけて抗体産生を促す。細胞性免疫も担う → 2番が正解
単球組織でマクロファージになる。好酸性顆粒をもつのは好酸球 → 4番が誤り
形質細胞抗体を作る細胞。核が分葉するのは好中球 → 5番が誤り

つまり白血球は5種類がそれぞれ別の仕事をしています。ここからは、そのなかでいちばん数が多い好中球です。

好中球は「食べに行く」細胞

犬の血液塗抹。丸く淡い赤血球が並ぶなかに、ひとまわり大きな細胞があり、濃い紫色の核がくびれながら曲がっている。細胞質はほとんど色がなく、目立つ粒は見えない。

犬や猫の好中球は直径10〜15μm。赤血球(犬で約7μm・猫で約6μm)よりひとまわり大きいのが第一印象です。細胞質にもつ顆粒が中性の色素に染まりやすいので「好中球」。ただし正常な犬や猫では顆粒は目立ちません。写真でも、核のまわりはほとんど色がなくのっぺりして見えます。

ここが好酸球・好塩基球との大きな違いです。あちらは赤い粒・紫の粒がはっきり見えるので、色のついた粒が見えたら好中球ではないと覚えておくと迷いません。

仕事はこうです。血管の壁にくっついて血管の外へ出て、炎症の場まで自分で移動し、着いたら細菌や異物を貪食し、リソソーム(細胞のなかの分解工場)で溶かす ── 現場にまっさきに駆けつける実働部隊です。

だからのなかにいちばん多いのが好中球で、好中球が集まる炎症を化膿性炎症とよびます。

核の形は「年齢」だった

わん助
さっきの写真、核がくびれてたね。あれってこわれかけってこと?
にゃるき
「こわれかけ」に見えるのはよく分かるにゃ。でも実はくびれているほうが大人にゃよ。好中球は成熟するにつれて核がくびれていくにゃ。だから核の形を見れば、その細胞の年齢がわかるにゃ。

好中球の核は、成熟とともにくびれて(分葉して)いきます。分葉したものを分葉核好中球、分葉する前の細長い核をもつものを桿状核好中球(かんじょうかくこうちゅうきゅう)とよび、この2つは区別して数えます。

この「年齢」を骨髄の段階までさかのぼって左から並べたのが、シリングの白血球分化模式図です。

未熟(若い) 成熟(大人) 骨髄芽球 前骨髄球 骨髄球 後骨髄球 桿状核球 分葉核球 ふだん出ているのは ほとんどが分葉核球 左方移動 骨髄が急ぐと、まだ若い細胞まで血液中に出てくる

左の4つは骨髄の中での名前です。名前を全部覚えるより、右にいくほど大人という並びをつかむのが先です。左へ行くほど若く、右へ行くほど成熟。ふだん血液中に出ているのは、ほとんどが右端の分葉核球です(桿状核球はごくわずか)。ところが感染などで好中球がどんどん消費されると、骨髄は成熟を待たずに送り出します。するとこの図の左側にいる若い細胞が血液中に現れる ── これを左方移動とよびます。

わん助
「左」って図の左のことだったんだ! 血が左に動くのかと思ってた……。若い=左だから左方移動か!

同じ左方移動でも、意味が正反対になる

ここが今回のいちばん大事なところです。左方移動には2種類あり、好中球の総数がどうなっているかで名前も意味も変わります。

わん助
それならかんたんだよ。若いのが出てる=骨髄ががんばってるってことでしょ? じゃあ左方移動が強いほど、体はちゃんと戦えてるんだね!
再生性
左方移動
好中球の総数が増えていて、そのなかに若い細胞が混じる。急性炎症に対して骨髄の産生が追いついている状態。軽度なら桿状核が出現し、中等度では後骨髄球まで、高度ではもっと若いものまで出てきます
変性性
左方移動
好中球の総数が減っている、または正常範囲なのに若い細胞が出ている。重度の急性炎症に産生が追いついていない状態で、非常に危ないと判断されます

白血球の数字だけを見ていると、変性性左方移動は「白血球は正常です」で通り過ぎてしまいます。数が正常なのに危ないという逆転が起きるのは、塗抹を見て初めてわかることです。

わん助
そっか、若いのが出ている理由が2つあるんだ! 増えたうえで出てくるのは間に合っているしるし、増えないまま出てくるのは間に合っていないしるし……。ぼく、逆に覚えるところだった。
臨床のひとこと 重い感染では、好中球そのものの見た目も変わります(中毒性変化)。細胞質が青みを帯びたり、デーレ小体という細胞質のふちの汚れのようなものが現れたりするもので、これも「体が急いでいる」しるしです。

好中球ずかん

成熟 血液塗抹の強拡大。中央の細胞の濃い青紫色の核が3つ以上のかたまりに分かれ、細い糸のような部分でつながっている。細胞質は淡く広い。

分葉核好中球

決め手:核に細いくびれがある

成熟した好中球。核に細い部分(くびれ)があり、かたまりがつながって見えます。少しでも細い部分があればこちらです。

国試メモ:ふだん血液中にいるのはこちら。くびれている=大人

写真:Medicallessons / CC BY-SA 3.0(ヒトの血液像・切り出しと色調補正あり)

若い 血液塗抹。中央の細胞の核が濃い紫色の帯のような形をしており、太さがほぼ変わらないまま馬蹄形に曲がっている。くびれて分かれてはいない。

桿状核好中球

決め手:核が帯のまま。太さが変わらない

分葉する前の好中球。核はソーセージ状(馬蹄形やU字に曲がります)で、途中がくびれていません。

国試メモ:これが増えていたら左方移動。⚠️単球も核が曲がったり分葉したりするので紛らわしい細胞です。迷ったら核の中身(クロマチン)を見ます ── 単球の核は好中球より淡く見えます(④で扱います)。

写真:Ajay Kumar Chaurasiya / CC BY-SA 4.0(ヒトの血液像・切り出しと色調補正あり)

覚え方のコツ

看護でどう活きるか

「数は正常です」で終わらせない 白血球数が正常でも、塗抹で若い好中球が目立てば変性性左方移動かもしれません。塗抹も見ておきましょうかの一言が、危険な状態の見落としを防ぎます
にゃるき
はじめにわん助は「数さえ見ればいい」と言ったにゃね。でも数が正常なのにいちばん危ないことがある ── それを見つけられるのは塗抹を覗いた人だけにゃ。よく最後までついてきたにゃ。
わん助
核の形が年齢だなんて思わなかった! 次はリンパ球と単球だね。その前に、アプリで白血球の問題を解いてくる〜!
犬の血液塗抹は当サイト撮影(切り出しと色調補正あり)。分葉核・桿状核の対比写真はヒトの血液像を Wikimedia Commons から引用し、核の色が見分けやすくなるよう色調を調整してあります(各写真のクレジット参照)。核の形の見分け方は動物でも同じです。ライセンスの詳細はライセンス情報のページをご覧ください。
※ ここに参考書のリンク枠を挿入予定
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