血球ずかん① 赤血球(前編)── 大きくて青っぽい粒は、何を教えてくれる?
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血球ずかん 全5回の第1回:
第11号の最後で予告した血液塗抹のずかん回です。赤血球は前後編に分け、今回は
正常な姿と、若い赤血球。
後編で形の異常、続いて③好中球、④リンパ球と単球、⑤好酸球と好塩基球と進みます。写真はすべて当サイトで撮影したものです。
わん助
白血球は5種類あるから見分けるんだよね。でも
赤血球はさ、どれも同じ丸い粒じゃん。
数を数えれば十分でしょ? ずかんにするほど見るところある?
にゃるき
それがあるんだにゃ。赤血球は
骨髄からの手紙にゃ。大きさと色をよく見ると、
骨髄が今どうしているかが書いてある。まずは1問いくにゃ。
まずは問題
写真は重度貧血を呈する犬の血液塗抹検査である。矢印で指し示す細胞はどれか。
- 1. 有核赤血球
- 2. 標的赤血球
- 3. 分断赤血球
- 4. 網赤血球
- 5. 球状赤血球
わん助
ぼく1番! だってまわりより
あきらかにデカいもん。大きいってことは、なかに
核が入ってるからでしょ?
にゃるき
惜しいにゃ。「大きい=何か入っている」という読みは筋がいい。でも、よーく見るにゃ。この子には
核がないにゃよ。核があったら、もっとくっきり濃い丸が写るにゃ。
正解は4番の網赤血球です。矢印の赤血球は、まわりよりひとまわり大きく、うっすら青みがかっています。この見た目を多染性といいます。そして多染性赤血球と網赤血球は同じ細胞で、名前が2つあるのは染め方が違うからです。ここが今日の山場なので、順番に見ていきます。
まず「ふつうの赤血球」を覚える
変化を見抜くには正常を知るのが先です。赤血球は中心がへこんだ円盤で、そのへこみが染まらず白く抜けます。これがセントラルペーラーです。
大きさは犬で約7μm、猫で約6μm。試験でよく問われるのがセントラルペーラーは猫では目立たないという点です。猫の赤血球はもともと小さく、へこみも浅い。「中心が白く抜けるのが赤血球」と丸暗記していると、猫の標本で戸惑います。
若い赤血球は「大きくて青い」
赤血球は骨髄でつくられます。もとになる赤芽球には核がありますが、成熟の途中で核を捨ててから血液へ出ていきます。ただし捨てた直後の若い赤血球には、まだRNA(細胞がタンパク質をつくるときの設計図のコピー)が残っています。
ここで色の話になります。ヘモグロビンは赤く、RNAは青く染まります。両方をもつ若い赤血球は赤と青の混ざった色に見える ── これが多染性です。しかも若い赤血球は成熟したものより直径が大きいので、「大きくて青っぽい粒」として目立ちます。
ふだんの染色(ディフ・クイックやライト・ギムザ)では、残ったRNAは青みとしてぼんやり現れます。これが多染性赤血球。いっぽうニューメチレンブルーで染めると、同じRNAが青い網目や点々としてくっきり出ます。この網目のような姿から網赤血球と呼ばれます。
上の写真がその染色です。ほとんどの赤血球がのっぺりしているなか、中央の2個だけに濃い青の点々があります。これが網赤血球。赤血球が壊されて失われている犬の血液で、骨髄が急いで新しい赤血球を送り出している状態です。
わん助
そっか!
多染性赤血球と網赤血球は別モノじゃないんだ。ふつうに染めたら「青っぽいでかい粒」、専用の染色をしたら「青い網目」。
見え方の名前が2つあるだけなんだね!
赤血球ずかん
正常
正常な赤血球
決め手:大きさがそろい、中心が白く抜ける
中心のへこみが染まらず白く見える=セントラルペーラー。粒の大きさがそろっているのも正常のしるしです。
国試メモ:直径は犬約7μm・猫約6μm。セントラルペーラーは猫では目立たない。寿命は犬で約120日(猫は約80日)。
写真:当サイト撮影(犬)
再生像
多染性赤血球(=網赤血球)
決め手:まわりより大きくて青っぽい
核を捨てたばかりの若い赤血球。RNAの青とヘモグロビンの赤が混ざって見えます。若いので直径も大きい。
国試メモ:大小不同と多染性がそろえば再生性貧血。ニューメチレンブルー染色では網目が見え、網赤血球として数えられる。
写真:当サイト撮影(犬・矢印は原図)
若い赤血球が見分けられると、貧血のときに骨髄が反応しているかが読めます。その読み方と有核赤血球・球状赤血球は後編で扱います。
にゃるき
ひとつ落とし穴があるにゃ。
EDTA採血した血(固まらない薬の入ったスピッツ)を長く置いてから塗抹を引くと、赤血球がエネルギー不足で
金平糖状赤血球になるにゃ。これは病気の所見じゃなくて
置きすぎたせいにゃ。
採血量が少なすぎる採血管でも同じことが起きるにゃよ。
覚え方のコツ
- 正常のものさしはセントラルペーラー:中心が白く抜ける。犬約7μm・猫約6μm。猫では目立たない。
- 若い赤血球は大きくて青い:ヘモグロビンの赤+RNAの青=多染性。同じ細胞をニューメチレンブルーで見れば網赤血球。
- 置いた血は形が変わる:金平糖状赤血球は病気ではなく、塗抹が遅れたしるし。
看護でどう活きるか
| 採血のあと |
「塗抹、今のうちに引いておきますか」── この一言が検査の質を守ります。置いたままだと金平糖状赤血球が増え、本当の形が分からなくなる。手が空いた人が先に1枚、が現場の答え |
| 「同じに見える」を疑う |
塗抹に大きさのそろわない赤血球や青っぽい粒が目についたら、骨髄が動いているサイン。「多染性が目立ちます」と伝えられると報告が一段変わります |
にゃるき
最初にわん助が言った「数を数えれば十分」は、半分あたりにゃ。数は
どれだけ足りないかを教えてくれる。でも
足りない体が今どうしているかは、形と色にしか書いていないんだにゃ。
わん助
赤血球はただの丸い粒じゃなかった! 大きくて青っぽいのは
骨髄からの新入り! 後編を読む前に、アプリで貧血の問題を解いてくるね〜!
顕微鏡写真はすべて当サイトで撮影したオリジナル(犬の血液塗抹・切り出しと色調の補正あり)。矢印の色に意味はなく、どれも「ここを見てください」の印です。
※ ここに参考書のリンク枠を挿入予定
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