にゃるき
にゃるき先生の解説コーナー
愛玩動物看護師国家試験合格に向けて一緒に頑張るにゃー!!

血球ずかん① 赤血球(前編)── 大きくて青っぽい粒は、何を教えてくれる?

⏱ 約9分 ずかん回2026-08-21 公開
🔬 血球ずかん 全5回の第1回第11号の最後で予告した血液塗抹のずかん回です。赤血球は前後編に分け、今回は正常な姿と、若い赤血球後編で形の異常、続いて③好中球、④リンパ球と単球、⑤好酸球と好塩基球と進みます。写真はすべて当サイトで撮影したものです。
わん助
白血球は5種類あるから見分けるんだよね。でも赤血球はさ、どれも同じ丸い粒じゃん。数を数えれば十分でしょ? ずかんにするほど見るところある?
にゃるき
それがあるんだにゃ。赤血球は骨髄からの手紙にゃ。大きさと色をよく見ると、骨髄が今どうしているかが書いてある。まずは1問いくにゃ。

まずは問題

重度の貧血を呈する犬の血液塗抹。多数の赤血球のなかに、周囲より一回り大きく青みがかった赤血球が3つあり、それぞれ青い矢印で示されている。白血球もいくつか混じっている。

写真は重度貧血を呈する犬の血液塗抹検査である。矢印で指し示す細胞はどれか。

わん助
ぼく1番! だってまわりよりあきらかにデカいもん。大きいってことは、なかに核が入ってるからでしょ?
にゃるき
惜しいにゃ。「大きい=何か入っている」という読みは筋がいい。でも、よーく見るにゃ。この子には核がないにゃよ。核があったら、もっとくっきり濃い丸が写るにゃ。

正解は4番の網赤血球です。矢印の赤血球は、まわりよりひとまわり大きく、うっすら青みがかっています。この見た目を多染性といいます。そして多染性赤血球と網赤血球は同じ細胞で、名前が2つあるのは染め方が違うからです。ここが今日の山場なので、順番に見ていきます。

まず「ふつうの赤血球」を覚える

変化を見抜くには正常を知るのが先です。赤血球は中心がへこんだ円盤で、そのへこみが染まらず白く抜けます。これがセントラルペーラーです。

大きさは犬で約7μm、猫で約6μm。試験でよく問われるのがセントラルペーラーは猫では目立たないという点です。猫の赤血球はもともと小さく、へこみも浅い。「中心が白く抜けるのが赤血球」と丸暗記していると、猫の標本で戸惑います。

若い赤血球は「大きくて青い」

赤血球は骨髄でつくられます。もとになる赤芽球には核がありますが、成熟の途中で核を捨ててから血液へ出ていきます。ただし捨てた直後の若い赤血球には、まだRNA(細胞がタンパク質をつくるときの設計図のコピー)が残っています。

ここで色の話になります。ヘモグロビンは赤く、RNAは青く染まります。両方をもつ若い赤血球は赤と青の混ざった色に見える ── これが多染性です。しかも若い赤血球は成熟したものより直径が大きいので、「大きくて青っぽい粒」として目立ちます。

骨髄のなか 赤芽球(核あり) 核を捨てる 若い赤血球 RNAが残っている やがて成熟 成熟した赤血球 ふつうの染色で見ると 大きくて青っぽい = 多染性赤血球 ヘモグロビンの赤 + RNAの青 ニューメチレンブルーで見ると 青い網目や点々が見える = 網赤血球 残ったRNAが染め出される 同じ1個の細胞を、違う染め方で見ているだけ

ふだんの染色(ディフ・クイックやライト・ギムザ)では、残ったRNAは青みとしてぼんやり現れます。これが多染性赤血球。いっぽうニューメチレンブルーで染めると、同じRNAが青い網目や点々としてくっきり出ます。この網目のような姿から網赤血球と呼ばれます。

犬の血液塗抹にニューメチレンブルー染色をしたもの。ほとんどの赤血球は淡く均一に見えるなか、中央の2個だけが内部に濃い青色の点々をもっている。

上の写真がその染色です。ほとんどの赤血球がのっぺりしているなか、中央の2個だけに濃い青の点々があります。これが網赤血球。赤血球が壊されて失われている犬の血液で、骨髄が急いで新しい赤血球を送り出している状態です。

わん助
そっか! 多染性赤血球と網赤血球は別モノじゃないんだ。ふつうに染めたら「青っぽいでかい粒」、専用の染色をしたら「青い網目」。見え方の名前が2つあるだけなんだね!

赤血球ずかん

正常 犬の血液塗抹。淡いピンクに染まった赤血球が並び、どれも中心が丸く白く抜けている。左端に白血球(好中球)が1つ写っている。

正常な赤血球

決め手:大きさがそろい、中心が白く抜ける

中心のへこみが染まらず白く見える=セントラルペーラー。粒の大きさがそろっているのも正常のしるしです。

国試メモ:直径は犬約7μm・猫約6μm。セントラルペーラーは猫では目立たない。寿命は犬で約120日(猫は約80日)。

写真:当サイト撮影(犬)

再生像 犬の血液塗抹。周囲より一回り大きく青みがかった赤血球が、青い矢印で示されている。

多染性赤血球(=網赤血球)

決め手:まわりより大きくて青っぽい

核を捨てたばかりの若い赤血球。RNAの青とヘモグロビンの赤が混ざって見えます。若いので直径も大きい

国試メモ:大小不同と多染性がそろえば再生性貧血。ニューメチレンブルー染色では網目が見え、網赤血球として数えられる。

写真:当サイト撮影(犬・矢印は原図)

若い赤血球が見分けられると、貧血のときに骨髄が反応しているかが読めます。その読み方と有核赤血球球状赤血球後編で扱います。

にゃるき
ひとつ落とし穴があるにゃ。EDTA採血した血(固まらない薬の入ったスピッツ)を長く置いてから塗抹を引くと、赤血球がエネルギー不足で金平糖状赤血球になるにゃ。これは病気の所見じゃなくて置きすぎたせいにゃ。採血量が少なすぎる採血管でも同じことが起きるにゃよ。

覚え方のコツ

看護でどう活きるか

採血のあと 塗抹、今のうちに引いておきますか」── この一言が検査の質を守ります。置いたままだと金平糖状赤血球が増え、本当の形が分からなくなる。手が空いた人が先に1枚、が現場の答え
「同じに見える」を疑う 塗抹に大きさのそろわない赤血球青っぽい粒が目についたら、骨髄が動いているサイン。「多染性が目立ちます」と伝えられると報告が一段変わります
にゃるき
最初にわん助が言った「数を数えれば十分」は、半分あたりにゃ。数はどれだけ足りないかを教えてくれる。でも足りない体が今どうしているかは、形と色にしか書いていないんだにゃ。
わん助
赤血球はただの丸い粒じゃなかった! 大きくて青っぽいのは骨髄からの新入り! 後編を読む前に、アプリで貧血の問題を解いてくるね〜!
顕微鏡写真はすべて当サイトで撮影したオリジナル(犬の血液塗抹・切り出しと色調の補正あり)。矢印の色に意味はなく、どれも「ここを見てください」の印です。
※ ここに参考書のリンク枠を挿入予定
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