リンパ球に関する記述として誤っているのはどれか。
正解は5番です。リンパ球には貪食能がありません。細菌や異物を取りこんで消化する係は、好中球と単球(マクロファージ)、そして樹状細胞です。
そして4番は正しい記述で、これが今回の見分けのカギになります。リンパ球は細胞のほとんどが核で、細胞質は核のふちにわずかに残っているだけです。このせまい細胞質が、あとで単球と分ける決め手になります。
リンパ球は好中球よりやや小さい小型の細胞です。核は円形〜類円形(まん丸か、少しゆがんだ丸)で、クロマチン(核の中の、紫色に染まる部分)がぎゅっと凝集していて濃い紫色に染まります。細胞質はせまく、写真でも核のまわりにうっすら見える程度です。
仕事は免疫の指揮と攻撃です。ヘルパーT細胞がB細胞に働きかけ、B細胞は形質細胞に変わって抗体を作ります。T細胞の一部は細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)になり、ウイルスに感染した細胞や腫瘍細胞を認識して直接しとめます。ナチュラルキラー(NK)細胞も異物をすばやく攻撃します。
つまりリンパ球は指示を出す・武器を作る・直接しとめる係で、取りこんで消化する係ではありません。だから5番が誤りです。
単球は比較的大型の白血球で、好中球よりも大きい細胞です。核の形は一定ではなく、そら豆のようにくびれたり、分葉したりします。細胞質は広く、なかに空胞(小さな抜けた穴のように見える部分)がみられることもあります。
そして単球の最大の特徴は、血液中から組織へ移るとマクロファージ(大食細胞)になることです。血液中にいるあいだは通りすがりで、現場に着いてから本気を出す細胞、と考えるとつかみやすいです。名前のとおりよく食べ、炎症や壊死のあとしまつを引き受けます。
| リンパ球 | 小型。核は円形〜類円形でクロマチンは濃い紫。細胞質はせまい。貪食せず、指揮と抗体産生と直接攻撃を担う |
|---|---|
| 単球 | 比較的大型。核の形は一定でなくクロマチンは薄い。細胞質は広く空胞をもつことがある。組織でマクロファージになり貪食する |
同じ視野に2つが並ぶと、右上の単球と左下のリンパ球は大きさも核の濃さも細胞質の広さもひと目で違います。ところが実際の標本にはその中間の大きさの細胞がいくらでも出てきて、大きさだけでは決められません。
そこでもう1本のものさしを使います。核クロマチンの濃さ(核の紫色の濃さ)です。白血球はこれできれいに2つに分かれます。好中球とリンパ球の核は濃く染まるのに対し、単球の核だけが薄く見えます。単球は細胞質も広いので、核が薄くて、まわりが広いのがそろえば単球です。
大きさでも形でも迷う場面で、最後の手がかりになるのが核の色です。覚えるのは「単球だけが薄い」の1つで足ります。ただし実際の鑑別では、細胞質の色あいもあわせて見ます。
3つを並べます。核の濃さは同じ標本の中で見比べるものなので、下の3枚は当院の同じ日の標本からそろえました。
③で扱った細胞です。核は濃く染まり、くびれて折れ曲がっています。単球と違って細胞質は広くありません。
国試メモ:③好中球で扱った桿状核は、単球と紛らわしい代表格です。
写真:当サイト撮影(犬・切り出しと色調補正あり)
核は円形〜類円形で、クロマチンが凝集して濃い紫色。細胞質は核のふちにわずかにあるだけです。
国試メモ:貪食しない。T細胞・B細胞・NK細胞に分かれますが、見た目では区別できません。
写真:当サイト撮影(犬・切り出しと色調補正あり)
核の形は一定ではなく、くびれたり分葉したりします。クロマチンの色が薄いのが最大の特徴です。
国試メモ:組織へ移るとマクロファージになります。炎症や壊死で増加。
写真:当サイト撮影(犬・切り出しと色調補正あり)
| 単球の増加 | 原則として各種炎症や壊死で増えます。好中球が駆けつけたあと、単球が続くためです。ただし犬では長引くストレスでも増え、そのときはリンパ球が同時に減ります。両方が揃ったら炎症とストレスの両方を疑います |
|---|---|
| リンパ球の減少 | リンパ球はストレスで減少します。ただしコルチゾールの働きなので効くまでに数時間かかり、診察室で緊張しただけでは減りません。長引く痛みや病気など続いているストレスを映します。 いっぽう診察台で暴れた直後はアドレナリンの働きでむしろ増えることがあります(とくに猫)。保定でとても暴れましたの一言を添えられるのは、そばで見ていた人だけです |