にゃるき
にゃるき先生の解説コーナー
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血球ずかん④ リンパ球と単球 ── 決め手は大きさではなく、核の色の濃さ

⏱ 約11分 ずかん回2026-08-23 公開
🔬 血球ずかん 全5回の第4回③好中球では核のくびれが細胞の「年齢」だと読みました。今回は丸っぽい核をもつ2つの細胞です。次回は⑤好酸球と好塩基球。
わん助
白血球の見分けはもうバッチリだよ。核がくびれてたら好中球、まん丸だったらリンパ球丸い核はぜんぶリンパ球ってことでしょ?
にゃるき
そこがいちばんの落とし穴にゃ。丸っぽい核をもつ細胞は、実はもう1ついるにゃよ。しかも仕事はほとんど正反対にゃ。まずは1問いくにゃ。

まずは問題

リンパ球に関する記述として誤っているのはどれか。

わん助
えっと……4番! だってリンパ球って小さいんでしょ? 細胞質がせまいなんて逆じゃない? 中身が詰まってるから、まん丸に見えるんだと思うんだけど。
にゃるき
核と細胞質のバランスを見にいったのはえらいにゃ。今日いちばん大事にするのが、まさにそこにゃよ。もう一度、リンパ球が何をする細胞かという目で5つを読んでみるにゃ。

正解は5番です。リンパ球には貪食能がありません。細菌や異物を取りこんで消化する係は、好中球と単球(マクロファージ)、そして樹状細胞です。

そして4番は正しい記述で、これが今回の見分けのカギになります。リンパ球は細胞のほとんどが核で、細胞質は核のふちにわずかに残っているだけです。このせまい細胞質が、あとで単球と分ける決め手になります。

リンパ球 ── 小さくて、ほとんどが核

犬の血液塗抹。淡いピンク色の赤血球が並ぶなかに、濃い紫色の丸い核をもつ細胞が1個ある。核が細胞のほとんどを占め、細胞質は核のふちにごくわずかに見えるだけである。

リンパ球は好中球よりやや小さい小型の細胞です。核は円形〜類円形(まん丸か、少しゆがんだ丸)で、クロマチン(核の中の、紫色に染まる部分)がぎゅっと凝集していて濃い紫色に染まります。細胞質はせまく、写真でも核のまわりにうっすら見える程度です。

仕事は免疫の指揮と攻撃です。ヘルパーT細胞がB細胞に働きかけ、B細胞は形質細胞に変わって抗体を作ります。T細胞の一部は細胞傷害性T細胞(キラーT細胞)になり、ウイルスに感染した細胞や腫瘍細胞を認識して直接しとめます。ナチュラルキラー(NK)細胞も異物をすばやく攻撃します。

つまりリンパ球は指示を出す・武器を作る・直接しとめる係で、取りこんで消化する係ではありません。だから5番が誤りです。

顕微鏡では区別できないもの T細胞・B細胞・NK細胞は仕事がまったく違いますが、見た目では区別できません。塗抹を覗いてわかるのは「リンパ球である」ところまでで、その先を知るには別の検査が必要です。塗抹で読めることと読めないことの境目は、ここにあります。
わん助
食べない白血球がいるなんて知らなかった……。じゃあ、丸い核をもつもう1つの細胞ってどんな子なの?
にゃるき
それが単球にゃ。リンパ球とは反対に、白血球のなかでもよく食べる係にゃよ。しかも血液の中にいるあいだは、まだ本気を出していないにゃ。

単球 ── 大きくて、よく食べる

単球は比較的大型の白血球で、好中球よりも大きい細胞です。核の形は一定ではなく、そら豆のようにくびれたり、分葉したりします。細胞質は広く、なかに空胞(小さな抜けた穴のように見える部分)がみられることもあります。

そして単球の最大の特徴は、血液中から組織へ移るとマクロファージ(大食細胞)になることです。血液中にいるあいだは通りすがりで、現場に着いてから本気を出す細胞、と考えるとつかみやすいです。名前のとおりよく食べ、炎症や壊死のあとしまつを引き受けます。

わん助
血のなかでは通りすがりで、組織に着いてからマクロファージになるんだ! 同じ細胞なのに、いる場所で名前が変わるんだね。
リンパ球小型。核は円形〜類円形でクロマチンは濃い紫。細胞質はせまい。貪食せず、指揮と抗体産生と直接攻撃を担う
単球比較的大型。核の形は一定でなくクロマチンは薄い。細胞質は広く空胞をもつことがある。組織でマクロファージになり貪食する

では、2つをどこで見分ける?

わん助
なんだ、それなら簡単じゃん。大きいほうが単球、小さいほうがリンパ球。大きさで見ればいいんだね!
にゃるき
典型的な2つを並べたときは、たしかにそう見えるにゃね。大きさに目をつけたのは自然なことにゃ。
犬の血液塗抹の同じ視野。右上に大きな細胞があり、淡い紫色のくびれた核のまわりに広い細胞質が取り巻いている。左下には小さな細胞があり、こちらは濃い紫色の丸い核が細胞のほとんどを占めていて、細胞質はほとんど見えない。

同じ視野に2つが並ぶと、右上の単球と左下のリンパ球は大きさも核の濃さも細胞質の広さもひと目で違います。ところが実際の標本にはその中間の大きさの細胞がいくらでも出てきて、大きさだけでは決められません。

そこでもう1本のものさしを使います。核クロマチンの濃さ(核の紫色の濃さ)です。白血球はこれできれいに2つに分かれます。好中球とリンパ球の核は濃く染まるのに対し、単球の核だけが薄く見えます。単球は細胞質も広いので、核が薄くて、まわりが広いのがそろえば単球です。

核が濃いのは2つ、薄いのは1つ 核が濃い 好中球 核はくびれる 顆粒は目立たない リンパ球 核は丸い・小型 細胞質はせまい 核が薄い 単球 核の形は一定でない 細胞質は広い 迷ったら 核が薄くて細胞質が広い ほうが単球 大きさは 単球 > 好中球 > リンパ球
にゃるき
この分け方が分かると、③でお預けにした宿題も片づくにゃ。桿状核好中球と単球は、どちらも核が曲がっていて紛らわしかったにゃね。あの2つで迷ったら、核の色が薄いほうが単球と見るにゃ。

大きさでも形でも迷う場面で、最後の手がかりになるのが核の色です。覚えるのは「単球だけが薄い」の1つで足ります。ただし実際の鑑別では、細胞質の色あいもあわせて見ます。

わん助
そっか、薄いのは単球だけなんだ! それなら覚えることが1つで済むね。大きさで迷ってたのがバカみたい……。

ずかん

3つを並べます。核の濃さは同じ標本の中で見比べるものなので、下の3枚は当院の同じ日の標本からそろえました。

核が濃い 犬の血液塗抹。赤血球よりひとまわり大きな細胞があり、濃い紫色の核がくびれながら折れ曲がっている。細胞質はほとんど色がない。

好中球(比較用)

決め手:核がくびれる

③で扱った細胞です。核は濃く染まり、くびれて折れ曲がっています。単球と違って細胞質は広くありません。

国試メモ:③好中球で扱った桿状核は、単球と紛らわしい代表格です。

写真:当サイト撮影(犬・切り出しと色調補正あり)

核が濃い 犬の血液塗抹。赤血球と同じか少し大きい程度の細胞があり、濃い紫色の丸い核が細胞のほとんどを占めている。

リンパ球

決め手:小型・細胞質がせまい

核は円形〜類円形で、クロマチンが凝集して濃い紫色。細胞質は核のふちにわずかにあるだけです。

国試メモ:貪食しない。T細胞・B細胞・NK細胞に分かれますが、見た目では区別できません。

写真:当サイト撮影(犬・切り出しと色調補正あり)

核が薄い 犬の血液塗抹。周囲の赤血球よりはるかに大きな細胞があり、淡い紫色のくびれた核のまわりに、うすい青みがかった細胞質が広がっている。

単球

決め手:大型・核が薄い・細胞質が広い

核の形は一定ではなく、くびれたり分葉したりします。クロマチンの色が薄いのが最大の特徴です。

国試メモ:組織へ移るとマクロファージになります。炎症や壊死で増加。

写真:当サイト撮影(犬・切り出しと色調補正あり)

にゃるき
覚えるときは「薄い・広い」がそろったら単球とおぼえるといいにゃ。核の濃さと細胞質の広さは、いつも一緒に動くにゃよ。

覚え方のコツ

看護でどう活きるか

単球の増加 原則として各種炎症や壊死で増えます。好中球が駆けつけたあと、単球が続くためです。ただし犬では長引くストレスでも増え、そのときはリンパ球が同時に減ります。両方が揃ったら炎症とストレスの両方を疑います
リンパ球の減少 リンパ球はストレスで減少します。ただしコルチゾールの働きなので効くまでに数時間かかり、診察室で緊張しただけでは減りません。長引く痛みや病気など続いているストレスを映します。
いっぽう診察台で暴れた直後はアドレナリンの働きでむしろ増えることがあります(とくに猫)。保定でとても暴れましたの一言を添えられるのは、そばで見ていた人だけです
にゃるき
はじめにわん助は「丸い核はぜんぶリンパ球」と言ったにゃね。丸っぽい核はもう1つあって、しかも仕事は正反対だったにゃ。大きさで迷ったら核の色を見る ── そこまでたどりつけたら上出来にゃ。
わん助
覚えるのが1つで済むなんて、うれしい! 残るは好酸球と好塩基球だね。その前に、アプリで白血球の問題を解いてくる〜!
このページの顕微鏡写真はすべて当サイト撮影(犬の血液塗抹)です。細胞が見分けやすくなるよう、視野の切り出しと色調の補正を行っています。
※ ここに参考書のリンク枠を挿入予定
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