血のめぐりの異常 ── 浮腫と水腫は、同じもの
🔎 病理のきほん 全8回の第6回:ここから循環障害に入ります。前回までは細胞や組織そのものの変化でしたが、今回は血のめぐりが狂ったときの話です。
わん助
浮腫と
水腫って、どう違うの? 別々に出てくるってことは、
別の病気なんだよね? 2つ覚えなきゃ……
にゃるき
それが
同じものにゃ。
第2回の「凝固壊死=乾酪壊死」と同じで、
呼び名が2つあるだけにゃ。しかも呼び分けの決め手は、
前回と同じ「場所」にゃよ。
浮腫と水腫は、同じもの
定義はこうです。血管やリンパ管のうっ滞により、血漿成分が末梢組織中に滲出した状態を水腫または浮腫といいます。
「または」です。2つの状態があるのではなく、1つの状態に2つの呼び名があります。では何で呼び分けるのか ── 場所です。
| 浮腫 | 皮下組織で起こる変化。足のむくみは皮下浮腫。動物ではとくに頚部や胸部に顕著な浮腫が認められる |
| 水腫 | 内臓諸臓器で用いるのが一般的。代表がうっ血性肺水腫。全身性の循環障害やショックに関連して認められる |
試験もここを正面から聞いてきました。「組織液が組織間隙に多量に貯留した状態はどれか」という問題で、選択肢に水腫・虚血・充血などが並び、正解は水腫。ほかにも「循環障害により起きる現象はどれか」の正解が水腫、「循環障害の結果生じる病変でないのはどれか」の選択肢に肺水腫、「輸液過剰の動物で生じる状態はどれか」の正解が肺水腫 ── 循環障害といえば水腫、という出方です。
血のめぐりが狂う4つの形
水腫にたどり着く前に、その手前の4つを整理します。分かれ目は動脈が動いたのか、静脈が動いたのかです。
わん助
充血とうっ血、どっちも血が増えるんだ! でも
入りすぎと、帰れないで反対なんだね。見た目が似てても、起きてることは逆だ。
そのとおりです。組織内で出血が起こって血管外に血液が貯留した病変は血腫とよびます ── これも押さえておきましょう。
うっ血が長びくと、水がたまり、色が残る
ここが今回の芯です。うっ血の説明は、こう続きます ── 慢性化すると血管から血漿成分が漏出して水腫が起こり、血球の破壊にともなうヘモジデリンの沈着もみられるようになります。
つまりうっ血 → 水腫 → ヘモジデリンの沈着という道すじが、1本につながっています。前回の実地問題「心疾患の犬の肺の褐色の色素はどれか → ヘモジデリン」の正体が、これです。
なぜ心臓がわるいと肺なのか。答えは、習う範囲をまたいだ先に置かれています ── 左房室弁に異常が起こると肺静脈の血液が停滞し、肺の毛細血管から液体成分が漏出して肺水腫となる(解剖生理)。心原性肺水腫はおもに左心不全による(循環器の疾患)。左がわるいと、肺に出るのです。
※ 出題でも問われています。「循環器疾患に関する記述として正しいのはどれか」の誤答肢に「右心不全では肺のうっ血が生じる」が置かれていました。左右を取りちがえさせるのが定番の罠です。
1問チャレンジ
循環障害に関する記述として、誤っているのはどれか。
- 1. 充血は、動脈血の過剰な供給により末梢組織の血液が増加した状態である。
- 2. 虚血は、動脈血の供給不全により末梢組織の血液が減少した状態である。
- 3. うっ血は、静脈血の血流停滞により末梢組織の血液が増加した状態である。
- 4. 浮腫と水腫は、発生する仕組みがまったく異なる別の病態である。
- 5. うっ血が慢性化すると、水腫やヘモジデリンの沈着がみられるようになる。
1正しい。通常は急性で一過性。
2正しい。脳ではとくに重要で、短時間の虚血で神経細胞死が起こる。
3正しい。充血と同じ「増える」だが、帰れないほう。
4これが誤り。同じもので、皮下なら浮腫、内臓なら水腫と呼び分けているだけ。
覚え方のコツ
- 浮腫=水腫:呼び分けは場所。皮下なら浮腫、内臓なら水腫(例=うっ血性肺水腫)。
- 増えるのは2つ:充血は入りすぎ(動脈)、うっ血は帰れない(静脈)。減るのが虚血。
- 循環障害といえば水腫:「循環障害により起きる現象はどれか」の答えになる。
- 左がわるいと肺に出る:左心不全で肺水腫。右と取りちがえさせる誤答肢が定番。
看護でどう活きるか
| 輸液の入れすぎ |
「輸液過剰の動物で生じる状態」として肺水腫が出題されている。滴下速度の管理は、そのままこの病態を防ぐ仕事。呼吸が速くなっていないかを、輸液中の観察項目として持っておく |
| むくみを見る場所 |
動物ではとくに頚部や胸部に顕著な浮腫が認められるとされる。「足がむくむ」は人のイメージ。どこを見るかが動物では違う |
| 赤みの報告のしかた |
充血とうっ血は見た目が似ていて、看護の場で区別を言い当てる必要はない。いつから・部位・広がり・温度を書いておけば、判断する人が使える所見になる |
わん助
浮腫と水腫、
2つ覚えなくてよかった! しかも
前回の褐色の色素と、今回のうっ血がつながったよ。バラバラだと思ってたのに、線になってきた!
にゃるき
次回はその先にゃ ── 血のめぐりが
止まってしまったときの話。
血栓・塞栓・梗塞の3つにゃ。名前は似ているけど、
第2回と同じで、どこで分かれているかを先に見つけるにゃ。
※ ここに参考書のリンク枠を挿入予定
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