大きくなる変化 ── 肥大と過形成、どっちが「数」?
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病理のきほん 全8回の第5回:第1〜4回は
退行性変化(死ぬ・小さくなる・たまる)でした。ここから逆向きの
進行性変化に入ります。
第3回の萎縮と1枚の表で並びます。
わん助
これはわかるよ!
肥大って
細胞が増えて大きくなることでしょ。ぼく、筋トレしたら細胞がいっぱい増えるって聞いたもん。
過形成は……なんか形が変わるやつ?
にゃるき
惜しい!
その2つがちょうど入れかわっているにゃ。しかもここは、
試験がいちばんはっきり聞いてくるところにゃ。1回で直してしまうにゃ。
1個が大きくなるのが肥大、数が増えるのが過形成
定義を並べます。肥大とは、個々の細胞の容積が増大することにより組織が増大する現象。おもに筋組織にみられ、例として過剰な運動による心肥大が挙げられています。
いっぽう過形成とは、細胞数の増加によって組織が増大する現象です(「増生(過形成)」と書かれることもありますが、試験に出るのは過形成のほうです)。
つまり、わん助の言った「細胞が増えて大きくなる」は過形成のほう。肥大は1個1個が大きくなることです。筋トレで筋肉が太くなるのは、細胞の数が増えたのではなく1本1本が太くなった ── これが肥大です。
試験はここを、そのままの言葉で聞いてきました。第3回の必須問題です。
| 出題 | 「細胞数の増加による組織の増大」はどれか |
| 選択肢 | 化生/過形成/肥大/再生/異形成 |
| 正解 | 過形成 |
問題文が定義そのままです。ここを逆に覚えていると、必ず1点を落とします。
第3回の萎縮と、1枚の表に並びます
第3回で「小さくなる変化」を見ました。今回の2つと合わせると、増える側と減る側がきれいに向かい合います。
わん助
あれ、
減るほうは1つだけなんだ? 数が減るのは低形成じゃないの?
にゃるき
いい引っかかり方にゃ。
第3回でやったところにゃ ── 萎縮の定義は
「細胞数や細胞容量が減少する」で、
数が減ることも萎縮に入るにゃ。低形成は
いつ起きたかで分かれる別枠にゃ。
のこり3つは「元にもどる・別物になる・おかしくなる」
進行性変化には、大きくなる2つのほかに3つあります。これらは刺激に対して細胞や組織が能動的に反応した結果と位置づけられています ── やられっぱなしではなく、応じているということです。
| 再生 | 欠損した細胞や組織が、もともとの細胞や組織の増殖分化によって復元される。⚠️神経や心筋の細胞は再生力が非常に弱い |
| 化生 | 組織がほかの組織に変化する。発生の由来が類似した細胞や組織間でのみ起こる。例=円柱上皮が扁平上皮に変わる扁平上皮化生 |
| 異形成 | 組織の構造に異常がある状態。低形成も示す場合が多い。⚠️がんになる前段階の細胞や組織も異形成とよばれる |
もうひとつ、名前だけは押さえておきたいのが肉芽組織です。創傷や壊死で欠損した部分を補充・充填するために増殖した新生組織で、線維芽細胞・膠原線維・毛細血管からできています。形成の初期には活発な炎症反応がみられます ── 傷が治る途中で赤く腫れるのは、これが起きているからです。
肝臓で慢性の傷害が続くと、この肉芽組織の形成(線維化)に肝細胞の再生性結節が加わり、肝臓の外観が凸凹になります。この状態が肝硬変です。再生と肉芽組織が同時に起きた結果だと分かると、言葉の中身が見えてきます。
1問チャレンジ
細胞や組織の変化に関する記述として、正しいのはどれか。
- 1. 肥大とは、細胞の数が増加して組織が増大することである。
- 2. 化生は、発生の由来がまったく異なる組織のあいだで起こる。
- 3. 再生とは、欠損した細胞や組織がもとの細胞や組織の増殖分化によって復元されることである。
- 4. 神経や心筋の細胞は、再生力がとくに強い。
- 5. 肉芽組織は、脂肪細胞とリンパ管を主体として構成される。
1誤り。数が増えるのは過形成。肥大は1個の容積が増大する。
2誤り。化生は発生の由来が類似した組織のあいだでのみ起こる。
3これが正しい。定義そのまま。
4誤り。神経や心筋は再生力が非常に弱い。
5誤り。線維芽細胞・膠原線維・毛細血管からできている。
覚え方のコツ
- 数が過形成、大きさが肥大:出題は「細胞数の増加による組織の増大」=過形成。定義文がそのまま問題文になる。
- 増える2つ・減る1つ:増える側は数と大きさで分かれるが、減る側は萎縮がまとめて受け持つ。低形成は表の外。
- 化生は「似た者どうし」:由来が類似した組織間でのみ。例は扁平上皮化生。
- 神経と心筋は戻らない:再生力が非常に弱い。第3回の「萎縮は戻ることがある」と混ぜない。
看護でどう活きるか
| 傷が赤く腫れる時期 |
肉芽組織の形成初期には活発な炎症反応がみられる。術創が赤いことが、そのまま「感染」を意味するわけではない。いつから・どう変わってきたかを記録すると、治る途中なのか悪化なのかを比べられる |
| 「肥大」という言葉 |
カルテや検査結果の心肥大・前立腺肥大は、細胞が増えたのではなく大きくなったという意味。飼い主さんに「増えている」と伝わらないよう、言葉を選ぶ場面がある |
| 戻らない組織がある |
神経と心筋は再生力が非常に弱い。だからこそ、その前の段階 ── 第3回で見た「使わないぶんの萎縮は減らせる」ほうに、看護の手が入る |
わん助
逆に覚えてた!
数が増えるのが過形成、1個が大きくなるのが肥大。……表で見ると、
増えるほうは2つで、減るほうは萎縮ひとつなんだね。なんか、すっきりした!
にゃるき
ここまでで
細胞と組織の変化は終わりにゃ。次からは
血のめぐりにゃ ── 充血とうっ血、どっちも赤いけど、まるで別の話にゃよ。
※ ここに参考書のリンク枠を挿入予定
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