定義を順に並べると、そのまま時系列になります。
| ①血栓症 | 血管の中で血液が凝固して血栓ができ、血管の内腔が閉塞した状態 |
|---|---|
| ②塞栓症 | 血栓や腫瘍細胞、寄生虫卵、空気などによって血管が閉塞した状態。このとき血管を閉塞させたものを栓子という |
| ③梗塞 | 塞栓の結果、その血管から血液を受けていた末梢組織に組織レベルの壊死が起こった状態 |
ちがいが見えてきたでしょうか。血栓は「できた物」、塞栓は「詰まった出来事」、梗塞は「詰まった先が死んだ結果」です。
そして③でようやく壊死という言葉が出てきます。第2回でやったあの壊死です。梗塞は、詰まりが原因で起きた壊死のこと ── 第2回で「梗塞は見た目の分け方とは別の物差し」と書いたのは、これを指していました。
臨床でいちばん名前を聞くのが、第1回でも触れた猫の大動脈血栓塞栓症です。心筋症の猫の腹大動脈にできた血栓は、病理の像としてよく示されます。心臓でできた血栓が流れ、大動脈から後肢へ向かう分かれ目で詰まる ── ①と②が同じ動物で続けて起きる、この回のお手本のような例です。
いいところに気づきました。播種性血管内凝固(DIC)とは、全身の微小血管内に多数の血栓が形成された状態です。名前のとおり、体じゅうで血が固まっています。
ところが定義は、そのすぐあとにこう続きます ── 血液凝固に必要な凝固因子が大量に血栓形成に使用されるため、これらの因子が不足し、出血しやすくなります。
つまり固まる材料を使い果たしてしまうのです。あちこちで固めているうちに在庫が尽きて、いざというときに止血できない。血小板数の減少もみられます。だから「DICの動物は致死的な状態といえる」とされています。
※ 出題(第3回 一般)でもここが問われました。「DICに関する記述として正しいのはどれか」の正解は「多臓器不全が起こる」。誤答肢に置かれていたのが「出血傾向は認められない」「血小板数が著しく増加する」 ── わん助と同じ勘ちがいが、そのまま罠になっています。
播種性血管内凝固(DIC)に関する記述として、誤っているのはどれか。
| 後肢が急に動かないとき | 猫の大動脈血栓塞栓症では、後肢に症状が出る。「さっきまで歩いていたのに、急に後ろ足が立たない」「足先が冷たい」は、そのまま伝えるべき所見。第1回で見たとおり、止まっている時間の長さが組織の運命になる |
|---|---|
| DICの動物を看るとき | 固まる病気だからと出血に油断しない。採血部位や点滴部位が止まりにくい、皮下に内出血が出てきた ── これは「関係ない変化」ではなくDICそのものの所見。押さえる時間を長めにとり、変化を記録する |
| 「詰まる」の言葉を分ける | 記録では血栓・塞栓・梗塞を書き分けたい。詰まった物があるのか、詰まった出来事なのか、その先が死んだのか ── どこまで進んだ話なのかが、読む人に伝わる |