にゃるき
にゃるき先生の解説コーナー
愛玩動物看護師国家試験合格に向けて一緒に頑張るにゃー!!

血球ずかん⑤ 好酸球と好塩基球 ── めったに会わない細胞は、覚えなくていい?

⏱ 約11分 ずかん回2026-09-14 公開
🔬 血球ずかん 全5回の最終回:④リンパ球と単球では核の色の濃さで2つを分けました。最後は、白血球のなかでも数の少ない2つです。
わん助
好酸球と好塩基球って、血液の中にちょっとしかいないんでしょ? めったに会わない細胞なんて、覚えなくていいよね。
にゃるき
数が少ないのは、そのとおりにゃ。でも、覚えておく理由がちゃんとあるにゃ。その話はあとにして、まず1問いくにゃ。

まずは問題

犬の血液塗抹。多数の赤血球のなかに白血球がいくつかある。赤い矢印が指す細胞は赤血球より大きく、細胞質に赤みがかった粒がつまっている。そのすぐ下には、くびれた核をもち粒の目立たない細胞がある。

写真の血液塗抹検査にある矢印の指し示す細胞はどれか。

わん助
うーん……1番の好中球かなあ。核がくびれてるように見えるし……。③で「くびれた核は好中球」って習ったよ。
にゃるき
核の形から見にいくのは、③で身につけた正しい手順にゃ。そのまま、今度は核のまわりにも目を移してみるにゃ。

正解は2番の好酸球です。好酸球の核も好中球と同じように分葉(核がいくつかのかたまりにくびれること)しているので、核の形だけでは分けられません。決め手は細胞質の粒(顆粒)の色です。

犬の血液塗抹の同じ視野を拡大したもの。上の細胞は細胞質に赤みがかった粒がつまり、そのあいだに紫色の核が見える。下の細胞はくびれた紫色の核をもち、細胞質は淡く粒は見えない。

問題の写真を拡大すると、上が好酸球、すぐ下が好中球です。同じ標本の同じ視野なので、染まり方の条件はそろっています。好中球の細胞質は淡く、粒はほとんど見えません。いっぽう好酸球の細胞質には赤みがかった粒がつまっています。

名前は「粒がどの色素に染まるか」

好中球・好酸球・好塩基球の3つは、細胞質に粒をもつので顆粒球とまとめてよばれます。名前の違いは、その粒が酸性と塩基性(アルカリ性)のどちらの色素に染まりやすいかです。

顆粒球は「粒の色」で見分ける 好中球 粒は目立たない 犬猫でいちばん多い 好酸球 ピンク〜オレンジ 酸性の色素 好塩基球 核と同じ濃い紫 塩基性の色素 猫では 好酸球の粒は小さな棒状(グラニュー糖のよう) 好塩基球の粒はラベンダー色
わん助
酸性の色素に染まるから好酸球、塩基性の色素に染まるから好塩基球なんだ! 名前がそのまま見分け方になってるんだね。

好酸球 ── 寄生虫とアレルギーの細胞

好酸球の粒は、酸性の色素でピンク色からオレンジ色に染まります。核は分葉しています。犬では丸い粒がはっきり見え、猫では小さな棒状の粒(グラニュー糖のよう)になります。

仕事は寄生虫とアレルギーです。粒の中には主要塩基性蛋白質(MBP)という物質があり、寄生虫を壊します。名前に「塩基」とありますが、これは好酸球の物質です。塩基性の蛋白質なので酸性の色素と結びつき、粒が赤く染まります。ただしMBPは正常な組織も傷つけてしまい、接触性皮膚炎などの遅延型(Ⅳ型)アレルギーの症状にもかかわります。好酸球はアレルギーや寄生虫感染で増加します。

好塩基球 ── まれにしか会えない細胞

好塩基球の粒は、塩基性の色素で染まります。犬では核と同じような濃い紫色、猫ではラベンダー色です。核は好中球と同じように分葉しています。

粒の中にはヒスタミン(血管を広げ、アレルギー症状を起こす物質)やヘパリン(血液を固まりにくくする物質)が入っています。好塩基球の表面にはIgE抗体(アレルギーにかかわる抗体)が結合していて、アレルギーの原因物質がIgEにくっつくと粒を放出し、アレルギーにかかわると考えられています。ただ、体の中で何をしているのかは、まだよくわかっていない部分が多い細胞です。

即時型(Ⅰ型)のアレルギー(原因にふれてすぐに起こるアレルギー)の主役は、組織の中にいる肥満細胞です。肥満細胞もIgEとヒスタミンでアレルギーを起こします。

わん助
でも、まれにしか見られないんでしょ? やっぱり覚えるのは好中球とリンパ球と単球だけでよくない?
にゃるき
ここがさっきの「あとで」の話にゃ。試験では「健康な犬の血液中で、数が最も少ない白血球はどれか」がくり返し問われているにゃ。少ないこと、そのものが答えになるにゃよ。

もう1つ大事なことがあります。ふだん少ない細胞だからこそ、増えていたら意味があるのです。好酸球が目立てば寄生虫やアレルギーを考えますし、好塩基球の増加も異常として扱われます。めったに会わない細胞は、見つけたこと自体が情報になります。

わん助
そっか、少ないのがふつうだから、見つけたら「おっ」ってなるんだ! 覚えなくていいどころか、見逃しちゃいけない細胞だったんだね。

ずかん

3つの顆粒球を並べます。好中球と好酸球は当サイト撮影の犬の標本です。好塩基球は当サイトの標本ではまだ撮影できていないため、ヒトの血液塗抹の写真を借りています。好塩基球の写真は染色も倍率も違うので、色の濃さや大きさは横に並べて比べないでください。

粒が目立たない 犬の血液塗抹。赤血球よりひとまわり大きな細胞があり、濃い紫色の核がくびれながら折れ曲がっている。細胞質はほとんど色がなく、粒は見えない。

好中球(比較用)

決め手:核がくびれ、粒は目立たない

③で扱った細胞です。核は分葉し、細胞質は淡く粒ははっきり見えません。

国試メモ:健康な犬の血液中でいちばん多い白血球です。

写真:当サイト撮影(犬・切り出しと色調補正あり)

粒がピンク〜オレンジ 犬の血液塗抹。赤血球より大きな細胞があり、紫色の分葉した核のまわりの細胞質に、ピンクからオレンジ色の丸い粒がつまっている。

好酸球

決め手:赤みがかった粒

核は分葉し、細胞質にピンク〜オレンジ色の粒がつまっています。犬では粒が丸く見えます。

国試メモ:寄生虫感染とアレルギーで増加します。

写真:当サイト撮影(犬・切り出しと色調補正あり)

ヒト・粒が濃い紫 ヒトの血液塗抹。灰色がかった赤血球のなかに、赤血球よりひとまわり大きな細胞がある。細胞全体に濃い紫色の粒がつまり、核の形はほとんど見えない。

好塩基球

決め手:濃い紫の粒・まれ

細胞質に濃い紫色の粒があります。ヒトの好塩基球はこの写真のように粒が多く、核を隠します。犬では粒がまばらなことが多く、猫では粒がラベンダー色です。

国試メモ:健康な犬の血液中で数が最も少ない白血球です。

写真:Animalculist / CC BY-SA 4.0(ヒト・切り出しあり)

赤い粒でも、好酸球とは限らない ウサギ・モルモット・ニワトリなどの好中球は、好酸性の粒をもっています。そのためこれらの動物の好中球は偽好酸球(ヘテロフィル)とよばれます。犬や猫の感覚で「赤い粒があるから好酸球」と読むと、取り違えてしまいます。
にゃるき
覚えるときは、名前の「酸」「塩基」を粒の色に置きかえるといいにゃ。酸はピンク〜オレンジ、塩基は濃い紫にゃ。

覚え方のコツ

看護でどう活きるか

好酸球の増加 寄生虫やアレルギーを考える材料になります。受付や問診で最後に駆虫薬を飲ませたのはいつですかと聞いておくと、獣医師が結果を読むときの手がかりになります
好塩基球らしき ふだんはまれにしか見られないので、見つけたこと自体が所見です。自分で決めつけず先生、好塩基球っぽい細胞がいます。見てもらえますかと声をかけます
ウサギの塗抹 赤い粒の細胞を見つけても、すぐに「好酸球が多い」とは書きません。先生、ウサギなので赤い粒は偽好酸球でいいですかと確かめます
にゃるき
はじめにわん助は「めったに会わない細胞は覚えなくていい」と言ったにゃね。でも少ないのがふつうだからこそ、見つけたら意味がある細胞だったにゃ。これで血球ずかん、赤血球から白血球まで全5回を完走にゃ。よくがんばったにゃ。
わん助
やったー、全部そろった! 血液塗抹の写真問題、アプリでまとめて解いてくる〜!
このページの顕微鏡写真のうち、問題の写真・好中球・好酸球は当サイト撮影(犬の血液塗抹)です。細胞が見分けやすくなるよう、視野の切り出しと色調の補正を行っています(問題の写真はアプリと同じ見え方のまま縮小のみ)。
好塩基球の写真は Animalculist「Basophil in blood」(CC BY-SA 4.0・ヒトの血液塗抹)を、細胞の周囲で切り出して縮小したものです。ほかの写真の出典はライセンス情報をご覧ください。
※ ここに参考書のリンク枠を挿入予定
「愛玩動物看護師国家試験対策アプリ」では血液検査の問題を多数収録中
愛玩動物看護師国家試験対策アプリ を App Store でダウンロード

関連ページ