写真の血液塗抹検査にある矢印の指し示す細胞はどれか。
正解は2番の好酸球です。好酸球の核も好中球と同じように分葉(核がいくつかのかたまりにくびれること)しているので、核の形だけでは分けられません。決め手は細胞質の粒(顆粒)の色です。
問題の写真を拡大すると、上が好酸球、すぐ下が好中球です。同じ標本の同じ視野なので、染まり方の条件はそろっています。好中球の細胞質は淡く、粒はほとんど見えません。いっぽう好酸球の細胞質には赤みがかった粒がつまっています。
好中球・好酸球・好塩基球の3つは、細胞質に粒をもつので顆粒球とまとめてよばれます。名前の違いは、その粒が酸性と塩基性(アルカリ性)のどちらの色素に染まりやすいかです。
好酸球の粒は、酸性の色素でピンク色からオレンジ色に染まります。核は分葉しています。犬では丸い粒がはっきり見え、猫では小さな棒状の粒(グラニュー糖のよう)になります。
仕事は寄生虫とアレルギーです。粒の中には主要塩基性蛋白質(MBP)という物質があり、寄生虫を壊します。名前に「塩基」とありますが、これは好酸球の物質です。塩基性の蛋白質なので酸性の色素と結びつき、粒が赤く染まります。ただしMBPは正常な組織も傷つけてしまい、接触性皮膚炎などの遅延型(Ⅳ型)アレルギーの症状にもかかわります。好酸球はアレルギーや寄生虫感染で増加します。
好塩基球の粒は、塩基性の色素で染まります。犬では核と同じような濃い紫色、猫ではラベンダー色です。核は好中球と同じように分葉しています。
粒の中にはヒスタミン(血管を広げ、アレルギー症状を起こす物質)やヘパリン(血液を固まりにくくする物質)が入っています。好塩基球の表面にはIgE抗体(アレルギーにかかわる抗体)が結合していて、アレルギーの原因物質がIgEにくっつくと粒を放出し、アレルギーにかかわると考えられています。ただ、体の中で何をしているのかは、まだよくわかっていない部分が多い細胞です。
即時型(Ⅰ型)のアレルギー(原因にふれてすぐに起こるアレルギー)の主役は、組織の中にいる肥満細胞です。肥満細胞もIgEとヒスタミンでアレルギーを起こします。
もう1つ大事なことがあります。ふだん少ない細胞だからこそ、増えていたら意味があるのです。好酸球が目立てば寄生虫やアレルギーを考えますし、好塩基球の増加も異常として扱われます。めったに会わない細胞は、見つけたこと自体が情報になります。
3つの顆粒球を並べます。好中球と好酸球は当サイト撮影の犬の標本です。好塩基球は当サイトの標本ではまだ撮影できていないため、ヒトの血液塗抹の写真を借りています。好塩基球の写真は染色も倍率も違うので、色の濃さや大きさは横に並べて比べないでください。
③で扱った細胞です。核は分葉し、細胞質は淡く粒ははっきり見えません。
国試メモ:健康な犬の血液中でいちばん多い白血球です。
写真:当サイト撮影(犬・切り出しと色調補正あり)
核は分葉し、細胞質にピンク〜オレンジ色の粒がつまっています。犬では粒が丸く見えます。
国試メモ:寄生虫感染とアレルギーで増加します。
写真:当サイト撮影(犬・切り出しと色調補正あり)
細胞質に濃い紫色の粒があります。ヒトの好塩基球はこの写真のように粒が多く、核を隠します。犬では粒がまばらなことが多く、猫では粒がラベンダー色です。
国試メモ:健康な犬の血液中で数が最も少ない白血球です。
写真:Animalculist / CC BY-SA 4.0(ヒト・切り出しあり)
| 好酸球の増加 | 寄生虫やアレルギーを考える材料になります。受付や問診で最後に駆虫薬を飲ませたのはいつですかと聞いておくと、獣医師が結果を読むときの手がかりになります |
|---|---|
| 好塩基球らしき | ふだんはまれにしか見られないので、見つけたこと自体が所見です。自分で決めつけず先生、好塩基球っぽい細胞がいます。見てもらえますかと声をかけます |
| ウサギの塗抹 | 赤い粒の細胞を見つけても、すぐに「好酸球が多い」とは書きません。先生、ウサギなので赤い粒は偽好酸球でいいですかと確かめます |